呑み処兵四郎vol.1「地酒屋ぼんちゃん・店主 田中清司さん」

「地酒屋ぼんちゃん」の店主、田中清司さん(愛称:ぼんちゃん)

お酒が大好き、食べるの大好き。ここは、お酒と食の達人の立ち寄る「呑み処 兵四郎(のみどころ ひょうしろう)」。お酒の呑み方はもちろん、達人直伝の「兵四郎おつまみ」も併せてご紹介いたします。おいしいお酒と個性的なおつまみの数々で、一杯ご一緒しませんか?

今回のゲストは福岡の日本酒名人こと「地酒屋ぼんちゃん」の店主、田中清司さん(愛称:ぼんちゃん)。このお店は、日本中の蔵元から集めたお酒が店いっぱいに並ぶ、日本酒の宝箱のような呑み処です。旬の食材をたっぷり使った手料理の数々も、全国のお酒好きを魅了しております。

ぼんちゃん流「純米吟醸 兵四郎」の愉しみ方

聡子:素朴な疑問なのですが、ぼんちゃんが日本酒を好きになったきっかけは何ですか?
ぼんちゃん:昭和60年に三遊亭楽太郎(現在の六代目円楽)師匠とプロダクションの関係者が酒好きで、師匠の落語を聞いた後に、全国の銘酒を師匠と一緒に呑む会「酔狂道を楽しむ会」が発足したんです。その会に参加されている国税局の鑑定官、蔵元さん、酒の問屋さん、酒販店さん、酒に関わるスペシャリストに、お酒の魅力を教えて頂いて、呑んでみて日本酒が大変好きになりました。
聡子:素敵な会ですね!
ぼんちゃん:お酒好きにはたまらい会合です(笑)。
聡子:ところで、最近のお酒の流行はどんな感じですか?
ぼんちゃん:戦後は甘口タイプが多かったのですが、現在は食文化の変化でおいしいつまみに合う辛口タイプが増えていますね。
聡子:食でお酒の流行も変わるのですね。九州の日本酒の特徴ってあるのですか?同じ九州でも地域性があるのでは、と。
ぼんちゃん:ありますよ。長崎県のお酒は甘口タイプが多くて、熊本県のお酒はやや甘口で濃醇なタイプが多いように感じます。福岡県・佐賀県のお酒は、やや辛口タイプが多いようですね。ただ最近は、全国的に少し甘口タイプのお酒を呑まれる方が増えているので、酒蔵でもやや甘口で淡麗なお酒の種類が増えているようですよ。
聡子:なるほど。それでは、ぼんちゃんから見て「純米吟醸 兵四郎」はどんな印象ですか?
ぼんちゃん:兵四郎さんのお酒は、原料のお米の良さを最大限に生かして醸造していると思います。良いお米で作られたお酒は、雑味がなくてキレが良いんです。
聡子:お米のほのかな甘みが残っていて、すごく優しい口当たりですよね。
ぼんちゃん:華美すぎないほのかな吟醸の香りと適度な酸味が、いつもの料理の風味を引き立ててくれる印象ですね。
聡子:第一印象がワインみたいと言われる方も多いんですよね。洋食でも違和感なく合わせられて重宝します。
ぼんちゃん:そう。口当たりが柔らかくて呑みやすいから、日本酒が苦手な方にも好評ですよ。
聡子:クセがないから呑みやすいですね。それでは、つい飲み過ぎてしまう人にアドバイスがあれば教えてください。おいしいお酒もついやり過ぎてしまうと台無しですから。
ぼんちゃん:お酒を呑む時はやわらぎ水といって、お水をたくさん飲んで胃の中のアルコール度数を下げてあげると、血中アルコール濃度を抑えられて二日酔いの予防になりますよ。これ、あるのとないのでは大違いですから。
聡子:大事ですね、翌日のためにも。それでは最後に、最近の日本酒事情を教えていただけますか?
ぼんちゃん:最近はね、全国の蔵元さんがいろんな品評会で入賞をされてマスコミに取り上げられているから、日本酒の需要が静かに増加しているんだよね。あまりブレイクしないで、ゆっくりと日本酒を愛していただきたいなーと思いますよ。
聡子:なるほど。呑む側も流行だけに踊らされないで、自分の好みを追求しながらじっくりと楽しむのが良いかもしれませんね。
ぼんちゃん:そうです、そうです。お好みや気になるお酒があればアドバイスしますから、どんどん開拓してくださいね。

これはいける!日本酒マスターが作る、「兵四郎おつまみ」3選。

ここのお店のもうひとつの魅力は、その日に仕入れる旬の食材をたっぷり使った手料理の数々。
家庭料理からふぐまで、お店では呑んべえではなくても十分愉しめる、おいしいお料理が満載なのです。
しかもそのお味は、グルメ漫画「美味しんぼ」にも登場するクオリティー。
それでは、ぼんちゃん流「味の兵四郎仕込みのおつまみ」3選をご紹介いたします。

おつまみその1
だしが決め手。
明太子豆腐「兵四郎」風。

明太子豆腐「兵四郎」風

明太子に煮出した「あご入兵四郎だし」を少しずつ加えてソース状になるようにほぐしたものを50g、温めた豆腐二分の一丁に乗せます。お好みでみりんや調味料などを加えます。サラダやディップとしてもおいしいですよ。

おつまみその2
お子様も喜ぶお魚レシピ。
秋刀魚の簡単ソテー

秋刀魚は三枚下ろし、またはお腹を開いて中骨を取り除き、薄塩をしておきます。10分ほど置いたら、煮出した「あご入兵四郎だし」におろし生姜を加えたもの(日本酒以外を呑む場合おろしニンニクでも良い)に5分ほど漬け込みます。水気を切ったのち洋こしょうを振って、片栗粉を両面まんべんなく付けます。最後に50ccのオリーブオイルを入れたフライパンで焼いたら出来上がり。食べる時にカボスかレモンをかけて召し上がれ。

秋刀魚の簡単ソテー

おつまみその3
意外と簡単!
魚の酒粕漬け「兵四郎」だし風味

魚の酒粕漬け「兵四郎」だし風味

酒粕に煮出した「あご入兵四郎だし」180ccを加え、砂糖大さじ8、塩大さじ4を加えてよく混ぜます。その後生魚に酒粕を塗り、ビニール袋に包んで1~2日冷蔵庫に入れます。冷凍保存も可能です。残った酒粕は、冷蔵庫で1ヶ月ほど保存できますよ。

いかがでしたか?秋の夜長は、「純米吟醸 兵四郎」とぼんちゃん仕込みのおつまみで一杯いかがでしょうか。ぼんちゃんに閃きが降りてきましたら、またこちらでご紹介しますので、要チェックですよ!

田中清司さん

地酒屋ぼんちゃん 店主

田中清司さん

500軒を超える全国の酒蔵を訪ねて集めた日本酒200種類、焼酎150種類がズラリと並ぶ博多の名店「地酒屋ぼんちゃん」の店主。当日仕入れる新鮮な食材で作る料理や自家製明太子も人気。

「地酒屋ぼんちゃん」
福岡県福岡市中央区春吉3-25-2
ぼんちゃんビル(18:00~24:00 日祝休)

【ホスト】

金澤聡子

「兵四郎マガジン」企画・編集担当。お料理修行中の身。音楽誌や広告、書籍編集などを経てフリーランスに。著書に「明太子LOVE」(双葉社)、「O-CHA STYLE」(アスペクト出版)など。